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小笠原国立公園

写真:南島・扇池
[南島・扇池]

地図

東京湾の南には、伊豆諸島に始まって南に延々と走る火山島や海底火山の列がある。伊豆小笠原海嶺である。このうち、伊豆諸島のはるか南方、東京から南南東に約1,000~1,200kmの、沖縄本島とほぼ同じ緯度に位置するのが小笠原諸島で、北から聟(むこ)島列島、父島列島、母島列島、火山列島と続く。

この公園は、北硫黄島以北の小笠原諸島を区域とする。清澄な空と海の狭間にあって多くの固有の生物たちを育む、亜熱帯の小さく美しい島々である。固有の生物種が多いことと、生物進化の過程を見ることができる地域として、平成23年6月に国内4番目の世界自然遺産に登録された。

島々の成因

写真:ムニンノボタン
[ムニンノボタン]

昭和47年に指定された公園である。

公園に含まれる島のうち、北硫黄島などは火山島であるが、そのほかの島々は古い火山島が浸食により一度海中に没したあと、隆起して再び島になったものである。山頂部の高さが比較的揃っているのは、海中にあった時代に頂部が波浪により浸食を受けたためである。どの島も周囲は海食を受け、断崖になっているところが多い。

植生は、父島ではシマイスノキ、シマシャリンバイなどの乾性の低木林が広く分布する。母島では石門(せきもん)山付近に残るシマホルトノキ、モンテンボクなどからなる湿性高木林に特徴がある。

父島では各所に枕状(まくらじょう)溶岩が見られるが、これは溶岩が海中に噴出して固まり堆積したもので、海底で火山活動があった証拠である。

圧迫される固有の生物たち

写真:父島から兄島
[父島から兄島]

小笠原の島々は、誕生以来大陸と陸続きになったことがない海洋島であるため、生物相に大きな特色がある。海上を長距離移動できない陸生動物を欠くため、全体の種類数は多いとはいえないが、固有種が多く、植物についても約40%が固有種だといわれる。また、陸貝類には、この島でいろいろな環境に適応して多数の種に分化しているものがある。さらに、同じ種でも島ごとにわずかに形態が異なるなど、種分化の途上にあると思われる種類もある。

一方で、島在来の生物は環境のわずかな変化や他の種との競争に弱く、人の活動や、持ち込まれた外来生物の影響を受け、絶滅したり、絶滅の危機にある種が少なくない。

古くは19世紀から20世紀初頭までに、オガサワラマシコ、オガサワラガビチョウ、オガサワラカラスバトの固有の鳥類3種が絶滅した。また、自然分布する唯一の哺乳類であるオガサワラオオコウモリは、父島では個体数がきわめて少なくなっている。現状で鳥類唯一の固有種であるメグロは、父島と聟島ではすでに絶滅し、母島列島のみに生き残っている。植物でもムニンキヌラン、トヨシマアザミのように20世紀前半に絶滅したと考えられる種がある。また、シマホザキラン、ムニンノボタン、ムニンツツジなどは、近年になって自生する株が激減しており、絶滅のおそれがきわめて高い。

写真:グリーンアノール
[グリーンアノール]

外来種については、持ち込まれたアカギが増殖して、在来の樹木に置き換わる例が拡大している。また、侵入したグリーンアノ-ル(トカゲの一種)が大繁殖して在来昆虫を食害し、大きな影響を与えている。このため、この両種やヤギ(ノヤギ)、オオヒキガエルなどについて、駆除したり侵入を防ぐ柵を設置するなどの対策がとられている。

自然保護と利用の共存を図る

小笠原は島の周りの水深が急激に深くなり、サンゴ礁の発達はよくない。しかし湾の内部などには小規模ながらサンゴ礁があり、造礁サンゴの種類も多く、華やかな色彩の熱帯系魚類とともに見事な海中景観をつくっている。

公園の利用は父島、母島の両島と近くの小島に限られる。交通は東京港から数日に一回出航する父島行きの船が唯一の定期便である。母島には父島からさらに海路2時間を要する。車道は、父島では島の北・中部を周回できるよう整備されている。歩道は父島・母島とも整備され、小笠原特有の生物や景観を楽しむことができる。

なお、自然との共生を図るため、全島をキャンプ禁止とするなどのルールが定められている。

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